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葛西甲乙さん(27 COFFEE ROASTERS)

葛西甲乙さん (27 COFFEE ROASTERS)
http://27coffee.jp/

湘南辻堂にあるコーヒーリテイルロースター「27 COFFEE ROASTERS」。このお店のオーナーである葛西さんは、日本におけるスペシャルティコーヒー文化の黎明期から、スペシャルティコーヒーを追求してきたその分野の先駆者でもある。

ホームページのコンセプトページに「コーヒー嫌いだった人に振り向いてもらえるような一杯を提供する工夫」とあるが、当の葛西さんも、元はコーヒーにあまり興味はなく、諸々事情があって勢いでコーヒーショップをはじめている。そんな葛西さんが、今ではスペシャルティコーヒーを世間に広めていく立場となっている。葛西さんのコーヒーに対するモチベーションを刺激したものは何だったのか。お話しをうかがってきました。

―コーヒーに興味がなかったのに、コーヒーショップを開いた理由と、コーヒーをいつ好きになったのか、教えてください。

葛西さん:当時は波乗りが大好きで辻堂に越して、都内まで通勤してましたてね。でもいずれ、ここら辺で仕事しながら生活もできたら良いなって思ってたら、実家の工場を閉めるから何かやってみないかって言われまして。それで何やろうってなった時にたまたま知人に紹介されたのが自家焙煎コーヒー店だったんです。
学生時代はずっと飲食のバイトが好きだったり、親戚も客商売、特に飲食の仕事をしている人が多いので・・・それ程深く考えずやろうって事になったんです。
もう東京に行くのが嫌だったんですよ笑。

お店をオープンした97年は、ちょうど「セカンドウェーブ」と呼ばれる、外資系某大手カフェの日本1号店がオープンした年でした。

元々「コーヒーが好き」というところからお店をスタートしていないので、当然ですが、コーヒーショップとして差別化ができず、経営はなかなかうまくいかなかったです。お店を始めて6年は、本当にいろんな事をやりながら試行錯誤を繰り返していましたが、根本的な解決にはなりませんでしたね。

27 COFFEE ROASTERS Photo

結婚することもあって、これはいよいよ「なんとかしなくてはいけない」と思いましたね。ちょうどその頃、日本でもスペシャルティコーヒーを広める為の協会が立ち上がって業界内でのプロ育成を始めたんです。自分もいつまでもお店に籠ってばかりでは何も変わらないと、積極的に外に出る機会を作ってました。

その時に協会主催のスペシャルティコーヒーをカッピング(ティスティング)セミナーに参加する機会があって、その時に、コーヒーに対する概念が一気に変わったんです。

―コーヒーに対する概念?

葛西さん:コーヒーの味がまるで違っていたんです。すごい酸味だったんですが、これまでとは明らかに違う鮮やかなものを感じたんです・・・。この時、今までの迷走が一気に晴れて「このカッピングの技術を習得すれば、コーヒーの品質を見極めるスキルと美味しさを追究すれば、必ず道は開ける」と思ったんです。
やっと自分が進むべき方向が定まったターニングポイントでした。

―湘南の人たちならスペシャルティコーヒーを受け入れてくれると感じたからですか?

葛西さん:全然そんなこと考えてなかったです(笑)とにかく「これしかない」と自分の感覚で
決めました。もうどうにかするしかなかったですから。

―センスですね(笑)。お店のデザインについてですが、どんなコンセプトで作っていったんですか?

葛西さん:あんまり流行に捉われないものがすごく僕は大事だと思っていました。
流行りのモノが終わったら次のモノ。というのは僕らはできないから。
とにかくシンプルで、誰でも受け入れてくれるような空間がよかったんです。

2007年頃からコーヒーの生産地とは別に、消費国のアメリカ、ヨーロッパ全般、オーストラリアなども回って、「どのようなお店づくりをして、どんな風に売っているのかな」というのは見てきました。数えきれないくらい。そのなかで印象に残ったデザインは記憶に留めて、自分のお店の方向性と合うデザインの断片は取り入れていったというかんじですね。
全部をそのままデザインの参考にしたというお店はないです。
ただ、「ラボ」というコンセプトは強く出したかった。小さな工場のようにしたかった。
「ここでコーヒーを焙煎し、抽出して、それをお客さんに体験してもらう」っていうことがいちばん重要なコンセプト。だからあんまりゴチャゴチャしないで、シンプルにしたかったんです。

27 COFFEE ROASTERS Photo

―どんな「体験」ができるのでしょうか?

葛西さん:コーヒーも実の種なんで、美味しいものは美味しいんですよ。間違いなく。最近は「果物と一緒だ」なんて言われてますけど、果物の美味しいものと美味しくないものと一緒でコーヒーにもあるんです。それを体験してもらうと、「いいコーヒーだな」っていうものもわかるようになってくるんです。

特別感なく、それを日々体験できたら、生活としていいんじゃないかなって。皆さん豊かになるし。細やかな幸せじゃないですか。でもそれが大事だと思うんです。
そこはブレずにやってきました。僕がスペシャルティコーヒーと出逢って、感じて、
一緒に出来てきたのが、「体験してもらう」というお店のコンセプトなんです。

―「体験してもらう」というキーワードが気になったんですが、何の豆の種類か忘れちゃったんですけども、僕も27 さんのコーヒーを飲んで、五感が開けるというか「脳がドーン」となるような体験が前にありました。仕事をしてる時に飲んだんですが、仕事が捗りました(笑)

―27COFFEEさんのコーヒーを飲んで、コーヒーが嫌いだったのに、好きになった方もいるのでしょうか?

葛西さん:いますいます。飲めないのに、お店に入ってきて飲んでみたり(笑)、
家族の方が買ってきて試しに飲ませたら「美味しい」ということになって。
コーヒーを好きになってくれた方がいます。ふとした時に、体験したことで、新しい世界や楽しみが
生活のなかで突然できるのっていいじゃないですか。

27 COFFEE ROASTERS Photo

―将来に向けてのビジョンなどありますか?

葛西さん:地域に根差してね。もうちょっと売りたいっていうのもあるけど(笑)
ずっと抱えてる問題なんだけど、やっぱりコーヒーって量を買わないと美味しい豆は
入ってきづらい。アメリカやヨーロッパはやっぱりたくさん買っているから、それに比べたらまだまだ日本は。コンビニや自販機ですぐ買えちゃうというのもあるけど。「同じコーヒーでもこんなに違うんだ」っていう人が増えるように、このお店で、抽出だとか、豆のことだとか、いろいろお伝えしていけたらなって思っています。

―葛西さん的にいちばんおすすめのコーヒー豆ってありますか?

葛西さん:やっぱり中米のホンデュラスですかね。

―他の国とどう違うんですか?

葛西さん:いいコーヒーって他の国もたくさんあるんですけど、
味が素晴らしいのは勿論ですけど、とっても田舎で働いてる人たちが素朴で家族や地元愛がすごくあります、やっぱり人との繋がりと素晴らしいコーヒーが作られるって、実は凄く大きなポイントなんですよね。

―根底にある「人」も含めてモノが出来ていくし、全部をトータルで見て、葛西さんはホンジュラスの豆をお勧めしたいということでしょうか。

葛西さん:そういうことですね。作るプロセスもすごく大事ですからね。

―最後の質問です。葛西さんは昔から手づくりにハマりやすい人だったんですか?

葛西さん:そうかもしれないですね。うちの親父が職人で細かいこと大好き。ある意味、僕も受け継いでますね。
スペシャルティコーヒーをやる前も、コーヒー淹れて、豆売りながら、手づくりでランチとかデザート作ったりとかしてたし。手づくりじゃないと嫌だったんだですよね。でもいろいろやっちゃうのが向いてないなって思ってやめたけどね(笑)

聞き手 collabore広報 服部雄一

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2012年 27 COFFEE ROASTERS 店舗家具製作

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